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下肢静脈瘤

静脈瘤について

はじめに

血管における光超音波イメージングは、比較的浅い位置にある血管を、光と超音波でくっきり見えるように撮像する新しい技術です(図1)。
造影剤の注射などは行わず、低侵襲に行える検査です。一般・消化器外科血管班では、光超音波イメージングがまずは安全に撮影が行えるかを調べるために、患者様30名を対象に、安全性の臨床試験を行っております。そして今後は様々な手足の末梢血管に症状のある方を対象に、どのような疾患(症状)の時に血管がどのような状態になっているか、血管の病気の診断や治療の指標として使えないかどうか、探索的な試験を行っていく予定です。

対象疾患は、下肢静脈瘤、末梢血管疾患、糖尿病、血管炎、レイノー症候群、血管腫、血管奇形などですが、手足に血管に関係する症状があり、光超音波イメージングの臨床試験にご興味のある方は、まずは一般・消化器外科血管外来にご連絡ください。
外来で通常の診察や検査を行い(保険の範囲内)、光超音波イメージングの対象になる症状があるかどうかなど、総合的に判断した上で、患者様に光超音波イメージングの臨床試験について詳しくご説明させていただき、同意が得られましたらご参加いただくこととなります(無料)。ここでは次の項より、対象の代表疾患である下肢静脈瘤についてご説明いたします。

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とは、下肢すなわち脚や足の比較的浅い位置を走行する静脈が、瘤(りゅう、こぶ)のように盛り上がったり(図2)、クモの巣や網目状に青や赤の血管が浮き上がったりする状態を指します。下肢静脈瘤は成人女性の20%(男性はその3分の1)の頻度で、特に出産後に現れる疾患です。

下肢静脈瘤の原因

基本的には心臓に戻ろうとする静脈血が逆流することにより生じてきます。静脈にはもともと「弁」が備わっていて、血液の逆流を防ぐ役割を果たしており、心臓に血液を流す方向にのみ開くようになっています。逆流防止弁である静脈弁が何らかの理由で壊れてしまうというのが最も多い原因です。静脈弁不全を生じる理由は、現在では明らかになってはいませんが、中高年の女性に多く、長時間におよぶ立ち仕事の方や、肥満の方などに多いことも分かっています。また、家族性に発生することも多く、何らかの遺伝的素因がある可能性も示唆されています。

下肢静脈瘤の症状

かなり高度の静脈瘤でも、特に自覚症状がない場合もありますが、下肢の倦怠感や重圧感、むくみなどを訴えることが多く、こむら返りをきたすこともあります。静脈瘤の部位の疼痛やかゆみを訴えることもあり、慢性湿疹のような皮膚炎をきたすこともあります。静脈瘤が長期間にわたる場合は、下肢の浮腫や皮膚の色素沈着をきたし、ひどい場合には下肢に難治性の潰瘍を形成することもあります。

下肢静脈瘤の診断

下肢静脈瘤は、問診、立位での視診、触診などによって、比較的容易に診断することが可能です。ただし、静脈瘤の中には前述のような原因で発生する一次性静脈瘤(いちじせいじょうみゃくりゅう)の他に、頻度は少ないものの深部静脈血栓後遺症(しんぶじょうみゃくけっせんこういしょう)として生じてくる二次性静脈瘤(にじせいじょうみゃくりゅう)も存在し、それらを正確に診断するために、各種の理学的検査や画像検査などを併用し、病態とその局在診断を行ないます。具体的には、診察室で簡易ドップラーエコー検査を施行することで、静脈血流の逆流の状態や局在を診断することが可能であり、ある程度の状況を把握することができます。また、深部静脈に異常のないことを確認する目的でカラードップラーエコー検査を施行しています。複雑な静脈瘤や、前回治療歴のある静脈瘤の再発症例などでは、直接下肢静脈に造影剤を注入する検査を施行する場合もあり、それぞれの病態に応じた検査を選択しています。

下肢静脈瘤の治療

悪性の病気ではありませんが、慢性、かつ進行性の病気であるため、いずれ何らかの治療を要することが多いです。基本的には患者さんの希望に応じて治療を行なうことになります。治療の適応と考えているものとしては、

■ 下肢のだるさ、むくみなどのうっ滞症状の強い状態
■ 色素沈着、皮膚炎、潰瘍などを併発した状態
■ 血栓性静脈炎を併発した状態
■ 美容的要望のつよい患者さん

などが挙げられますが、無症状の場合でも患者さんが希望されれば、ご相談させていただいています。
具体的な治療方法としては、長時間の立位や座位を避けることや、横になるときには下肢を高くして寝ることなど、日常生活の指導から始まり、以下の3つの治療選択肢があります。実際にはそれらの組み合わせもあり、治療方法は非常に多岐にわたるといえます。

1. 圧迫療法

表在静脈へ血液が流れ込んでうっ滞することを避ける目的と、筋肉のポンプを助ける目的で、下肢を圧迫する方法です。具体的には弾性包帯あるいは弾性ストッキングを着用していただきます。根本的な治療方法ではありませんが、静脈瘤の最も基本的な治療方法であり、下肢のむくみやだるさなどの症状を改善し、静脈瘤の進行を予防します。後述のような手術や硬化療法を選択された場合も必ず必要な処置となります。

2.手術

根治的な治療方法で、血液の逆流を根本で止めてしまう方法です。大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)あるいは小伏在静脈(しょうふくざいじょうみゃく)に逆流を認めるような静脈瘤に適応となります。手術の方法には以下の4つの術式があります。

①血管内焼灼術

超音波で太ももやふくらはぎの静脈(大伏在静脈や小伏在静脈など)を穿刺し、カテーテルで血流うっ滞の原因となっている静脈を焼灼(高熱で静脈を変性させる)・閉塞させることで、血液の流れをなくし、血液の逆流を止めます(図3)。焼灼方法にはラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation;RFA)と、レーザー焼灼術(endovenous laser ablation;EVLA)があります。

②ストリッピング手術

太ももの付け根と膝上もしくは膝下の内側に小切開(小さな傷)をおき、血流のうっ滞の原因となっている静脈に特殊なワイヤーを通して、その静脈を引き抜きます。

③高位結紮術

逆流を認めている静脈の中枢(足の付け根に近い側のこと)で静脈を露出し、結紮切離することで、末梢への血液の逆流を止めます。

④小切開法(静脈瘤切除術)

拡張した表在静脈の真上に2-3cm程度の小切開をおき、拡張した静脈を切除します。
麻酔の方法は患者さんによって選択していますが、いずれも局所麻酔のみで施行可能な手術で、術直後から歩いていただくことも可能です。適応や術式などは、診察にてご相談させていただきます。

3. 硬化療法

静脈瘤の中に硬化剤を直接注入することで、血管を固めて徐々に吸収させ、原因となってる血管を消失させてしまう方法です。主にクモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤と呼ばれる、かなり末梢レベルでの細い静脈瘤には良い適応とされています。外来でも施行可能な治療方法で、反復して行なうことも可能です。手術の適応となるような、いわゆる伏在型静脈瘤と呼ばれる静脈瘤に対しては、硬化療法のみでは効果が薄いので、手術療法と組み合わせて施行することもあります。

当院の静脈瘤治療の特徴

局所麻酔下での血管内焼灼術を主に行っており、早期離床・早期退院を目指しています。
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